
箕島高校が今年春の選抜高校野球大会に18年ぶりに出場するのを記念して元監督の尾藤公(びとう・ただし)さんの講演会(毎日新聞和歌山支局主催、和歌山県高野連、和歌山放送など後援)が14日、和歌山市の市民会館小ホールで開かれました。尾藤さんが昨年日本高野連の「育成功労賞」を受賞した記念も兼ねており、春夏甲子園連覇などを一緒に体験した野球部部長や選手が駆けつけ、当時の思い出話に話を咲かせるなど、感動的なエピソードにあふれた講演会となりました。

(尾藤さん=左から2人目=を囲んで、県高野連の田井伸幸会長、、東裕司さん、上野山善久の対談)

(最後はセンバツ出場を決めた箕島の松下博紀監督=左、を紹介、先輩らがエールを送っていました)
「私と箕島野球」と題して行われた講演会で尾藤さんは、
23歳で母校の硬式野球部の監督になった当時を振り返り、甲子園に行くには名門の2,3倍は練習しなければ追いつかないと、厳しく激しく練習して行き過ぎたこともあったと思うが、ある意味で生徒に恋、恋愛をしていたようにも思える。子どもたちが何を考えているのか知りたかったし、自分の気持ち、何を考えているかを知って欲しい、という気持ちでいっぱいだった。
また、野球は、ボールがゴールに入って得点するサッカーやバレーボールなど他の球技と違い、人が塁を進み本塁に入らないと得点が入らない独特な競技です。そのため、バンドが重要な役割りを果たし、仲間を次の塁に進め、チームの勝利のために自分の打ちたいという気持ちを抑え、犠牲バンドをする、そうした「フォー・ザ・チーム」の精神が必要だ。
この野球の「バントの心」は「おかげさんで」「感謝」につながり、ひいては「やがて家族や地域や、国や世界、地球のために何か役に立ちたい、貢献したいという心につながっていくことを学んだ」とも語りました。
さらに話は高校野球で伝説になっている昭和54年夏の3回戦「箕島×星稜」戦になり、1点を勝ち越され延長12回裏、2アウトで監督自身が万事休す、試合をあきらめかけて、負け試合の監督インタビューを考え出した際、次のバッターの嶋田宗彦選手が、バッターボックスからベンチに戻って来て突然「ホームランを狙ってもいいですか!」と聞きにきたので驚いたそうです。
当初は「ホームランなんて言って打てなければチームのみんなに大恥をかくのに彼は何を言っているんだ」とその行動がわからなかったのですが、はっと気づいたそうです。
彼は、キャッチャーで守りの要で洞察力もある男。いつもは「最後の最後まであきらめるな」といっている私が、弱気になって試合をあきらめているのを、以心伝心、気づいて、逆に監督とチームに「元気を出せよ!」「まだ終わってないやないか」と喝を入れに来たことを。
こんな状況で喝を入れること自体すごいことですが、嶋田選手は有限実行、実際にホームランを打って絶体絶命のピンチを救ったのですからまさに神がかりの活躍です。
この選手からの喝で、目が覚めた尾藤監督はさらに18回までの死闘を制する闘志を取り戻したというのです。
延長18回の激戦を制したあとの宿舎でのミーティングは、選手たちが正座して号泣する中、監督も言葉にならなかったそうですが、選手たちの目はきらきらと輝き、選手たちと心が通じ合ったことを実感したそうです。
そのチーム一体感のなかで、準々決勝、準決勝、決勝と勝ち進むことができ、春夏連覇にもつながった、と、隠れたエピソードを話されていました。
□和歌山放送ニュース再録
◎尾藤公さんが「私と箕島野球」で講演
今年春の選抜高校野球大会に18年ぶりに出場する箕島高校の元監督で、昨年日本高野連の「育成功労賞」を受賞した尾藤公(びとう・ただし)さんの講演会が、きょう(14日)和歌山市で行われました。
きょう(14日)午後6時過ぎから、和歌山市の和歌山市民会館で「私と箕島野球」と題して行われた講演会で尾藤さんは、「野球はサッカーやバレーボールと違い、ボールが得点を決めてくれないのが特徴です。点を得るために、自分が打ちたい気持ちを抑え、しっかりとバントを決め、仲間を次の塁に進めることが、チームの勝利に貢献する」と、野球における「バント」プレーの重要性を話し、そして、バントの持つ「チームに貢献する」という心が、「やがて家族の、国の、そして地球のために貢献したいという心につながっていくことを、野球から学んだ」と語りました。
また、高校野球で伝説になっている昭和54年夏の「箕島×星稜」戦についても触れ、延長12回に1点を勝ち越され、負けムードになったベンチを察した嶋田宗彦(しまだ・むねひこ)選手の「ホームランを狙います」発言や、延長18回の激戦を制したあとの宿舎でのミーティングが、言葉にならなかったものの、選手たちと心が通じ合うことが出来、それが春夏連覇につながったなど、数々の当時のエピソードを披露しました。
このあと、県高野連の田井伸幸(たい・のぶゆき)会長や、上野山善久(うえのやま・よしひさ)、東裕司(あずま・ひろし)さんら当時の選手らが尾藤さんを囲んで対談を行い、さらに、飛び入り参加した松下博紀(まつした・ひろき)監督に、尾藤さんらがセンバツ大会に向けて激励のエールを送っていました。
(2009年02月14日 20:34 報道部)